70年前に無償無私の理念で発足したわが国有数のキリスト教福祉団体の奉仕の群像

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聖隷福祉事業団の源流
タイトル
サブタイトル
浜松バンドの人々
著者・編者・訳者
蛯名賢造著
発行年月日
1999年 9月 20日
定価
7,480円
ISBN
ISBN4-7948-0460-1 
判型
A5判上製
頁数
650ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-蛯名賢造(えびな・けんぞう)/1918年青森県平内町生まれ。現在、獨協大学名誉教授。巣鴨学園理事。経済学博士。日本文芸家協会会員。『札幌農学校』『新渡戸稲造』『北海道・拓殖開発経済論』『石舘守三伝』『隅谷三喜男?学問・思想・信仰』他著作多数。

内 容

 今日、浜松の聖隷福祉事業団は、わが国有数の独自のキリスト教精神に立脚した福祉団体として全国的に知られており、二一世紀の高齢化社会の到来とともに、その活動が大いに期待されている。
 著者はこの団体の歴史的な発展に注目し、本書において初めて聖隷のいまだ混沌たる創世記時代の精神的かつ信仰的な源流(ルーツ)に遡って探求してみようと思い立った。
 幸いに元聖隷エデン園長の島田愃平氏の全面的な資料収集の協力を得て、ここに“浜松バンドの人々(キリストの信仰に燃えて愛の実践を行う若者の集団)”と題して、その源流の歴史的叙述の取りまとめに着手することができた。仕事を始めて10年の歳月を経て400字詰1400枚の原稿が蓄積され、このたびA5判・650頁・20章の大著となって公刊される運びとなった。
 この物語は、いまから70年前の昭和初期、軍国主義下の暗い時代、浜松の数名のクリスチャン青年の燃え上がる愛と奉仕の無償無私の生活に始まる。当時、全く顧みられることのなかった重症の結核病患者の人々に対し、救いの手を差し伸べることから出発する。その中心人物は本事業団の創設者の長谷川保・八重子夫妻であるが、筆者は夫妻を支えた20数名のバンドの若者の群を、同じように本書の主人公として取り上げ、彼らの心悩める魂の軌跡を、それぞれの個性に即して、全人間像を叙述していこうと努めた。大野篁二、鳥居恵一、内山徳治夫妻のグループ、義人渡辺兼四郎・草夫妻の協力、松本美実・亭子牧師夫妻の献身、代二世代の鈴木利三郎・鈴木唯男そして福原達三の奉仕、アウトサイダーの齋藤塾主齋藤謙三の助言等々にも及ぶ。この時代、浜松はわが国でも稀にみる民衆運動と精神が高揚し、“浜松バンドの人々”とも称せられる豊かな精神と信仰を持ち続けた人材を輩出した。
 筆者はさきに『札幌農学校−日本近代精神の源流』を公刊し、北海道大学の前身、札幌農学校の生んだ偉大なキリスト者内村鑑三、新渡戸稲造を軸に、“札幌バンドの人びと”の系譜を叙述し、この流れこそ戦後日本の平和再建の精神的原動力と論断した。いま、膨大な資料・記録の上に積み上げられ、まとめられた浜松バンドの無名の人々の群像の存在を目撃し、彼らの志のなかに内村・新渡戸に比肩する高貴の精神を見出すことができる。

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