「文明国」に蔓延する精神の貧困を超えて、真に「個」となるための象徴的活動を探求

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タイトル
象徴の貧困
サブタイトル
1. ハイパーインダストリアル時代
著者・編者・訳者
ベルナール・スティグレール著
 
ガブリエル・メランベルジェ+メランベルジェ眞紀訳
発行年月日
2006年 4月 10日
定価
2,808円
ISBN
ISBN4-7948-0691-4 
判型
四六判上製
頁数
256ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-Bernard STIEGLER(ベルナード・スティグレール)
フランスの哲学者。
主著『技術と時間』を始め、数多くの著作を刊行する一方、
文化産業が支配する現代社会を問題化する国際的運動組織ARS INDUSTRIALIS(www.arsindustrialis.org)を立ち上げ、精力的に活動している。

内 容

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 技術によって「神に類似するまでになりながら、今日の人間は自分が幸福だと思えない」とフロイトが『文化における不安』の中で指摘したのは1930年のことであるが、以来この「不安」はいや増すばかりである。しかも現代の技術がもたらすのは、オーディオビジュアルやテレコミュニケーションといった人間の感性や認知に直接関わる機器なのだ。まさにそれらの文明の利器によって、フロイトの語った「大衆の心理的貧困」が今や「象徴の貧困」として、かつてないほど深刻になっていることを、フランスの哲学者スティグレールは本書の中で鋭く分析している。
 「物があふれているのに心が満たされない」と誰もが口にしながら、そこから一歩も進めないのはなぜなのか。それは現在の資本主義がまさにその不満を搾取するからである。「本当の自分」「私らしさ」を求めようとすれば、市場はすかさず「あなただけの」「特別な」商品を提示してくる。このような消費、欲望の規格化を繰り返すうちに、その人の市場での位置も価値も定まり、やがて同じような嗜好を持つ者同士の自閉的な、自己批判能力に欠けたグループがあちこちにできあがる。それはもはや「われわれ」と呼べるような共同体——特異な「私」たちの拮抗によってダイナミックに姿を変えていけるような集団ではない。
 だが「私」の特異性とは本来、何らかの形、痕跡、つまり象徴として外に向けて表現され、「われわれ」のもとにそれが渡った時に初めて意味を持つものなのだ。しかし目先の利益のみを追求するハイパーインダストリアル社会は、この象徴的活動、「個」となるための実践の可能性をことごとく奪っていく。それは今の世の中を生きづらくするだけでなく、人類の未来を阻むことにつながるだろう。石油がやがて枯渇するように、このままでは精神という資源が枯渇することは目に見えているのだから。
 本書でスティグレールが呼びかけるのは、持続可能な欲望を生み出せる技術の在り方を模索することである。そしてその精神のエコロジーのための第一歩は、「文明国」に今はてしなく蔓延する象徴の貧困という現実を、まず「感じる」ことから始まるのだ。

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