ハーフライフ(半減の生)の現実の中で、人間としての明晰さを保ち続けていくために。震災を生きたあるフランス人文学者の手記

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関連ワード
フクシマ・ノート
タイトル
サブタイトル
忘れない、災禍の物語
著者・編者・訳者
ミカエル・フェリエ著
 
義江真木子訳
発行年月日
2013年 10月 4日
定価
2,090円
ISBN
ISBN978-4-7948-0950-6 
判型
四六判並製
頁数
308ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-Michaël FERRIER(ミカエル・フェリエ)
作家、中央大学教授。
NHK教育テレビ「フランス語会話」元講師。
フランス語の著作に『キズ』(2004年)、『東京、夜明けの小さなポートレート』(2005年、アジア文学賞)、『幽霊を憐れむ歌』(2011年、ポルト・ドレ賞)など。
本書は2012年のエドゥアール・グリッサン賞受賞。

内 容

 3・11から2年半近くが過ぎました。この間、私たちは災禍からどのような教訓を引き出し、未来への貴重な手がかりとして、自らの「生」の中に刻みこんできたのでしょうか。1万キロ離れたフランスに住む私は、震災から1年後、日本在住のあるフランス人文学者が本国で出版し大きな反響を呼んだ1冊の本に出会いました。この災禍は私たちの「生」に何をもたらしたのか。それを綴った本書を、私は日本の読者にも是非届けたいと思いました。本書の著者フェリエ氏は、20年にわたり日本の大学で教鞭をとってこられました。災禍に際して氏は日本に残り、救援物資を持って東北を回りながらメモをとりました。それは、人間と災害についての、そして、原子力という現代文明がもたらした「ハーフライフ(半減の生)」と呼ぶべき状況についての生きた記録です。「ハーフライフ」とは、放射性物質の半減期を意味すると同時に、放射能汚染により切断された日常の生(自然の恵みを食し、自然の風を浴びるシンプルな喜びを切断された不完全な生活)を表現した言葉です。本書はスローガンやヒーローの物語ではありません。未曾有の災禍に動揺する一市民―たまたま、ものを書く外国人であった市民―が、何を感じ、手探りし、見聞きし、理解したかを綴った「ノート」です。自然の威力、現代文明の装置、人間の悲しみや喜び、時代を越えた先人の思索。「ノート」にはこれらについての記録が、ゆっくりとした「生」のスピードの中で縦横に展開していきます。3・11は私たちに、「生」についての根本的な問いかけを突きつけました。私たちの課題は、現代文明につきまとうリスクに目を開いたうえで、タブーと幻想を乗り越え、可能な限り賢明な「生」のための選択を共に確認していくことにあると考えます。本書が、「ハーフライフ」に馴致されることのない、人間としての明晰さを保つための手がかりとして読み継がれていくことを願ってやみません。
(訳者 義江真木子(よしえ・まきこ)仏語翻訳家)

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