ナチズムは絶滅政策だけでは解明できない?そのユートピア計画の系譜を19世紀思想史に辿り、ナチ思想研究の空白を埋める意欲作!

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関連ワード
ナチ・イデオロギーの系譜
タイトル
サブタイトル
ヒトラー東方帝国の起原
著者・編者・訳者
谷喬夫著
発行年月日
2012年 12月 11日
定価
2,530円
ISBN
ISBN978-4-7948-0924-7 
判型
四六判上製
頁数
256ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-谷喬夫(たに・たかお)-1947年群馬県前橋市生。
新潟大学大学院現代社会文化研究科教授。政治学・政治思想史専攻。
著書に『現代ドイツの政治思想』、『ヒムラーとヒトラー』(講談社選書メチエ)、訳書にC.R.ブラウニング『普通の人びと?ホロコーストと第101警察予備大隊』(筑摩書房)など。

内 容

 ヒトラーと第三帝国といえば、だれでも思いつくのは、アウシュヴィッツに代表されるユダヤ人の絶滅政策であろう。なぜヒトラーは数百万のユダヤ人を、かれらがユダヤ人であるということを理由に殺戮したのか。もしわれわれが絶滅政策の原因をそれ単独で考察しようとすれば、われわれは最後にはヒトラーの精神病理に、すなわちパラノイア(偏執的妄想)に、また国民の「権威主義的人格」(アドルノ)に辿り着くように思われる。しかしそれだけでは、われわれはナチズムの半面だけしか見ていないことになる。
 これまであまり着目されてこなかったとはいえ、ヒトラーにはユートピアといってもよいほどの積極的な政治構想が存在した。それはヨーロッパの政治・社会構造の革命と再編成をめざす「東方ゲルマン大帝国」構想である。そのためにヒトラーは東方では、西側での「西欧国家システム」の戦争と異質な、戦時国際法を無視した対ソ「絶滅戦争」に乗り出したのである。そしてユダヤ人絶滅政策はこの「ヒトラーの戦争」の不可欠な要素として、新帝国のゲルマン人種の純血性を確立するために実施されたのである。それはヒトラーがユダヤ人に対して抱いた「病的憎悪」に還元できるものではない。
 それではヒトラーは、こうした「東方ゲルマン大帝国」構想をどこから想いついたのであろうか。それはすべてかれの独創だったというわけではない。本書のテーマは、ヒトラーの積極的な政治構想の起原がどこにあるのかを、帝政ドイツの右翼イデオロギーや19世紀の「ドイツ東進運動」イデオロギーのなかに、また第一次世界大戦における東部戦線の国民的経験のなかに追究しようとしたものである。
(著者 谷 喬夫たに・たかお

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