「考えること」と「信ずること」の葛藤を支持するリベラルな人間観のために。13世紀西欧の知的世界から現代グローバル社会を逆照射

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タイトル
理性と信仰
サブタイトル
法王庁のもうひとつの抜け穴
著者・編者・訳者
アラン・ド・リベラ著
 
阿部一智訳
発行年月日
2013年 6月 10日
定価
8,100円
ISBN
ISBN978-4-7948-0940-7 
判型
A5判上製
頁数
632ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-Alain de LIBERA(アラン・ド・リベラ)
フランス中世哲学史家。1948年生まれ。
1985年より高等研究院の指導教官として、西欧中世のキリスト教神学史を講ずる。
1997〜2008年、ジュネーブ大学教授。帰国後、高等研究院に戻る。
邦訳『中世知識人の肖像』『中世哲学史』『ヨーロッパ中世の哲学』。

内 容

 どこで「考えること」を止めて「信ずること」を始めるか。これは特定の信仰を持っていなくても、誰もが抱えている問題である。たとえば訳者は無宗教であるが、元旦には初詣にでかけるし、近親者の霊にはきちんと手を合わせる。脳科学の成果に魅了されながらも、脳科学の前提からすればありえないこと、たとえば、意志の自由を信じている。しかし、「考えること」と「信ずること」の仕分けがそれでいいのかどうかを問い始めると自分が深淵に直面していると感ずる。少なくとも、今の日本社会ではそれは自己責任で遂行されなければならない孤独な課題である。13世紀西欧はまったく逆だった。そこには理性と信仰をいかにすり合わせるかを納得いくまで探求させる制度的保証があった。大学がそうである。とくに重要なこととして、聖書の啓示を探求の出発点にしなければならない神学部の下に、それを出発点にしなくてもよい人文学部(今日の教養学部)が置かれた。本書『理性と信仰』が力を込めているのは、こうした知的世界に出入りしていたさまざまな知識人の学説を考古学者の手つきで拾い集め、歳月の汚れを洗い流すことである。その作業を見守っているうちに、私たちは著者アラン・ド・リベラが大変重要なことをいくつか言いたいのだと気づく。たとえばリベラルアーツ(一般教養)が宗教自体のリベラル化に役立つという指摘。イスラム世界はどういうわけか中世西欧が実現した大学というアイデア(とくにその二層構造)をついに実現しえなかった。しかし最大の眼目は、洗い直された資料群から、ローマカトリック教会の現行の教義体系とは違うもうひとつのパラダイムが浮かび上がるということであろう。そのもうひとつの方が、異なる宗教間の、あるいは世俗と宗教との相互理解に役立つのではないか。そう信じさせるだけの説得力が本書にはある。
 勇気づけられる一冊である。
(訳者 阿部一智)
理性と信仰  目次
中世哲学の手引きI 主要登場人物 i
中世哲学の手引きII 主要登場人物の出生地 xv
凡例 xvi
序 論 社会学者とローマ法王 9
第一章 トマス・アクィナスを忘れる あるいはアルベルトゥス・パラダイム 41
 1 「11月15日の呼びかけ」─予告された回勅の記録 43
 2 論敵から見たアルベルトゥス主義─ジェルソンの診断 55
   検閲のリレー─ジェルソン的批判の意味 66
   最初の区間─アルベルトゥスと1277年の断罪 76
 3 哲学と神学 86
   なわばりの問題 89
   アルベルトゥスと「アヴェロエス主義」─アナーニ論争 93
第2章 アルベルトゥス・マグヌスの哲学構想 101
 1 自然学の区分 107
   アルベルトゥスの卓見その(1)─『霊魂論』を生物学に編入する 115
   アルベルトゥスの卓見その(2)─知性の研究を自然学に挿入する 121
 2 保守主義と進歩主義のはざまで 125
   アルベルトゥスと1270年の断罪 130
   アルベルトゥスとシゲルスと1272年の学則 138
第3章 哲学者・占星術師・降霊術師 147
 1 アルベルトゥス・マグヌスとヘルメス文書─玉虫色の関係史 149
 2 アルベルトゥス・マグヌスと占星術─摂理と運命 153
   アフロディシアスのアレクサンドロス─アリストテレス主義者の運命論 154
   アレクサンドロスのストア派批判 159
   アルベルトゥスの「運命」概念─ヘルメス主義と占星術 164
 3 アルベルトゥスの占星術資料在庫 167
   作者が作中人物を探す─「ハリ」の失踪 169
   「現実の」学知と「現実の」理性─或る事例研究 183
 4 アルベルトゥスの運命論は1277年に断罪されたか 190
   『15の問題について』第3問 194
   或る戦略的テクスト─『〈自然学講義〉注解』第2巻第2章19節 197
   再び『15の問題について』第3問 204
 5 あいまい戦略─アルベルトゥス・マグヌスと錬金術 207
   アルベルトゥスの錬金術資料在庫 207
   『15の問題について』第13問─ストア派と錬金術師 211
第4章 教授たちの哲学 217
 1 「哲学入門書」の哲学 221
   「最高善」の哲学 229
    ジルソンのシナリオ 232
 2 1270~1277年のパリ危機 237
   検閲者の創作性 238
   1270~1277年の危機と「ラテン・アヴェロエス主義」 247
 3 「パリ危機」を総括する 267
   哲学と教会当局─トマス・アクィナス訴追案件 272
第5章 信仰と理性 アヴェロエス対トマス・アクィナス 285
 1 公認歴史学のふたつの神話 287
   スコラ学の「黄金時代」 289
   二重真理 294
 2 トマスとアラブ思想 298
   トマス・アクィナスによる信仰と理性 305
   トマスとアヴェロエス主義 309
 3 イブン・ルシュドと1272年の学則 314
第6章 哲学と神学 アルベルトゥス・マグヌスによれば 323
 1 『命題集注解』と『倫理学について』の哲学と神学 327
 2 神学とは何か 333
 3 神学は学知なのか神秘体験なのか 339
   『驚異神学大全』の学的構造 344
   神性学と神学 349
 4 流れの形而上学 352
   「流れ」のラテン的知見─ボエティウスのけもの道 353
   「流れ」のアラブ的知見─いくつかの道しるべ 357
   隠れプロティノス主義の宇宙モデル 359
第7章 知的幸福を経て至福の生へ 367
 1 アルベルトゥス主義のマニフェスト─
    『知性と叡智的なものについて』 370
   典拠網と認識系 371
   哲学・予言・神秘体験 376
   アルベルトゥスの仲間たち─
    アヴィセンナ・ヘルメス・ディオニュシオス 389
 2 知性の貴族主義─アルベルトゥス主義の不人気な果実 394
 3 マイスター・エックハルトと至福の生 406
   離脱と観想 408
   高貴なひと 413
 4 哲学者と世捨てびと 424
結 論 ビリーグラハム・チルドレンとメッカコーラ・チルドレン 435
訳者あとがき 445
原注 579
訳注 602
人名索引 612

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