学ぶことへの欲望と「人間らしい」生き方に子どもたちを誘いながら、大人自身の欲望をも問う、珠玉の哲学的啓蒙。

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関連ワード
向上心について
タイトル
サブタイトル
人間の大きくなりたいという欲望
著者・編者・訳者
ベルナール・スティグレール著
 
メランベルジェ眞紀訳
発行年月日
2009年 4月 23日
定価
1,540円
ISBN
ISBN978-4-7948-0802-8 
判型
B6変型
頁数
120ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-Bernard STIEGLER(1952-)
ベルナール・スティグレール。フランスの哲学者。主著『技術と時間』をはじめ、数多くの著作を刊行する一方、文化産業が支配する現代社会を問題化する国際的運動組織ARS INDUSTRIALISを立ち上げ、精力的に活動している。

内 容

 10歳から読める「小さな講演会」邦訳の第2弾は、ベルナール・スティグレールによる「向上心について」である。
 かつて『現勢化』のなかで自身の数奇な経歴を告白しながらスティグレールは、哲学とはすべての人間が潜在的に与っている使命であると語っていたが、その哲学者の潜在態の範例は「子ども」かもしれない。子どもたちの好奇心、彼らが立ち上がり、手を伸ばし、高いところへ駆け登ろうとするさまは、哲学者の身ぶりとも言えるのである。
 講演で子どもたちを前にスティグレールは、そもそも人類の歴史そのものが、さらに上へ向かおうとするこの欲望に牽引されてきたのだという寓話を語り、つねにより良い自分をめざして学び続ける「人間らしい」生き方へと彼らをいざなう。それは困難な道には違いないが、だが簡単なことをやっていたのでは退屈してしまうというのが、まさに哲学者と子どもの共通点なのだ。子どもたち向けにやさしい言葉で語られているこの講演は、親を始めとする大人たちへの呼びかけでもある。なぜなら子どもの向上心をある程度まで守り育て、その力を他者との共生のために振り向けるよう導くのは周りの大人の責任なのだから。
 ところが今日では大人自身が、市場原理が優先される社会で生き残るのに精一杯になってしまったり、あるいは向上心を格差社会における上昇志向とはき違えたりしてはいないだろうか。大人が自分そして自分たちの社会に欠けているものを求め、未来を模索しようとしない限り、子どもに学びへの真の動機付けを与えることはできないだろう。どんな世界を子どもたちに手渡したいのか。どんな子どもたちを世界に送り出したいのか。問われているのは大人の欲望である。(訳者 メランベルジェ眞紀 上智大学教員)

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