“暗鬱なヒーロー”像に仮託されたイメージを言語化し、9・11後の「呪われた国家」が抱える苦悩を読み解く

978-4-7948-1090-8

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“暗鬱なヒーロー”像に仮託されたイメージを言語化し、9・11後の「呪われた国家」が抱える苦悩を読み解く

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タイトル
バットマンの死
サブタイトル
ポスト9・11のアメリカ社会とスーパーヒーロー
著者・編者・訳者
遠藤徹著
発行年月日
2018年 6月 14日
定価
2,592円
ISBN
ISBN978-4-7948-1090-8 C0036
判型
四六判並製
頁数
272ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-遠藤徹(えんどう・とおる)
同志社大学グローバル地域文化学部教授。
「モンスター」「プラスチック」といったユニークな切り口から英米文学・文化研究を行なっている。
また近年は作家としても知られ、「姉飼」で日本ホラー小説大賞を受賞、「麝香猫」で川端康成文学賞候補に選出された。
関連既刊書:『スーパーマンの誕生 KKK・自警主義・優生学』(新評論)

内容

 映画『バットマン ビギンズ』(クリストファー・ノーラン監督による〈ダークナイト・トリロジー〉の第一作)では、バットマンことブルース・ウェインが、幼いころ目の前で両親を殺された体験が描かれる。理不尽な暴力によって大切なものをいきなり奪われてしまったのである。この体験がもとでウェインは、突然両親がいなくなるという虚無感、犯人が別の事件で死亡したことによる怒りの対象の喪失といった、解消しようのない苦悩、あるいは衝動を抱え込むことになる。
 そうした内部に鬱積した「向けるべき対象」のない苦悩、あるいは衝動を解放する手段として選ばれたのが、かつて自分を恐怖させたコウモリという表象へと自らを置き換える、あるいは分裂させることだった。かくして“暗鬱なヒーロー”バットマンが誕生する。
 他の選択肢がなかったという意味で、バットマンは呪われているともいえる。だから、彼の物語にはスーパーマンのような能天気さはない。なぜなら、バットマンとは、内なる苦悩、あるいは衝動を解放するための経路にすぎないのであり、極端にいえば自分が「正義」を行っているかどうかはもはや関係ないからである。
 そのことは、ポスト9・11のアメリカ社会の状況とみごとにリンクしているのではないだろうか? 突如襲いかかってきた無差別テロという理不尽な暴力。これに対し、アメリカは即座に自らを「被害者」と位置付けた。そして、国民の抱えこんだ恐怖や苦悩、あるいは「向けるべき対象」の見えない衝動を、明確な「加害者」の幻像を捏造することによって解放した。それが対テロ戦争だったと読むこともできるように思われる。
 それは、苦悩せる呪われたヒーロー像が、苦悩せる呪われた国家の隠喩となった瞬間だったのではないだろうか。
(えんどう・とおる)

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