大きな構造変化の下で、いかに「新たな豊かさ」を創出するか。地域に分け入り、人びとの「希望」に学ぶフィールドノート第7弾。

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タイトル
地域産業の「現場」を行く 第7集 変わる「豊かさ」の意味
サブタイトル
誇りと希望と勇気の30話
著者・編者・訳者
関満博著
発行年月日
2014年 7月 8日
定価
2,592円
ISBN
ISBN978-4-7948-0973-5 
判型
四六判並製
頁数
248ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-関満博(せき・みつひろ)-
1948年生まれ。
明星大学経済学部教授、一橋大学名誉教授。博士(経済学)。
東日本各地の震災復興・産業再生にアドバイザーとして携わる。
代表作『東日本大震災と地域産業復興Ⅰ』『鹿児島地域産業の未来』のほか、『『震災復興と地域産業1〜5』など編著書多数。

内 容

 リーマンショック(2008)、東日本大震災(2011)、そして中国の対日デモ(2012)と、この5年ほどは日本の経済社会に大きな影響を与える事象が相次いだ。90年代初頭のバブル経済崩壊以降、縮小に身を委ね、「失われた20年」をやり過ごしていた私たちは、成熟した経済社会、人口減少、少子高齢化、さらにグローバル化といった新たな構造条件の下で、「新たな豊かさ」を獲得していくためのあり方を問われている。この5年前後の「地域」の現場で最も目立つのは、「六次産業化」の取り組みであろう。
 各地の若くて意欲的な担い手は農業の大規模経営による効率化を進め、他方、女性たちは加工・直売等による付加価値の向上を視野に入れている。また近年、これまで衰退産業とみなされていた水産加工業の領域で新たな取り組みが開始されている。冷凍・冷蔵技術、物流・販売・通信技術といった供給側の技術革新の進展、そして需要側の成熟化・少子高齢化に伴う個食化などの事情が顕著となり、地域の農林水産業において新市場が急速に開けてきたのである。
 一方、日本のモノづくり系産業は80年代後半から一気にアジア・中国展開を重ねてきた。従来の繊維・日用品、電気・電子に加え、最近では自動車産業の海外生産も増加している。こうした新たな条件の中で、「国内に残る」道を含め、進むべき方向が次第に鮮明になりつつある。このような近年の動向をとらえる際の最大のポイントは、「地域」の意味の重大性が高まってきた点にある。
 成熟化と高齢化に伴い、縮小経済の段階に入った時代においては、人びとが暮らす「地域」を丁寧にみて、地域資源(自然・人的)に深く着目した取り組みを行うことが不可欠となる。「域外から所得をもたらす産業」「雇用の場を提供する産業」、そして「人びとの生活を支える産業」の意味が大きくなるのである。シリーズ7冊目となる本書では、このような視点に立って各地の取り組みをみていく。そこから、多様性に富み、そこに暮らす人びとに「希望」をもたらす地域産業のあり方が浮かび上がるであろう。(著者 関 満博)
地域産業の「現場」を行く――第7集 / 目次


序――内外環境の変化に伴う「地域」の意味の深まり 1


Ⅰ 六次産業化に向かう

はじめに 20

第181話 富山県砺波市  米作の地富山で果樹専業の直販 22
――転作を機にぶどう専業として歩む「宮崎ぶどう園」
逆風突破の鍵:独自の工夫で農業に新境地を拓く 22
◆水稲の地でぶどう園を展開 23
◆当初から「直売」を意識する 24
◆全国的に高い評価を得る 25
◆兼業と水稲の地で新たな可能性を提示 26

第182話 宮崎県延岡市(旧北方町)  山間地で後継者が事業的拡大に向かう 28
――栽培、直売、加工、観光農園化に向かう「田口ファミリー果樹園」
逆風突破の鍵:自分の価格をつけられる事業に 28
◆SAPで農業技術と経営感覚を学ぶ 29
◆直売、加工、異業種連携による商品開発 31
◆次の課題は観光農園化 32

第183話 栃木県大田原市  水稲、畜産で大規模展開 34
――加工、レストランにも向かう「前田牧場」
逆風突破の鍵:若い女性後継者が六次化に向かう 34
◆水稲から畜産に入り、規模拡大 35
◆ミートショップとカフェを展開 38
◆六次産業化への挑戦 40

第184話 秋田県大潟村  一二〇〇ヘクタールの米の直販をまとめる 43
――日本のモデル農業として進化「大潟村あきたこまち生産者協会」
逆風突破の鍵:大規模化、高付加価値化に向かう 43
◆入植合格通知と同時に減反が始まる 45
◆一二〇〇ヘクタール、一万トンの米を扱う 46
◆大規模化が進む日本農業の行方 46

第185話 富山県砺波市(旧庄川町)  米作、野菜苗、花苗、加工品から、カフェを目指す 49
――複合経営に向かう「梅香園」
逆風突破の鍵:大規模化、多様化で豊かな農業へ 49
◆父は水稲、後継者は花卉に向かう 50
◆野菜栽培にも踏み込む 50
◆水稲単作地帯に新たな可能性 52

第186話 兵庫県尼崎市  幻の尼いもを再生し、焼酎生産に向かう 54
――地域の総力を結集し、特産品を開発「尼いもクラブ」
逆風突破の鍵:地域の人びとの「豊かさ」 54
◆「宝の山を当てる」 53
◆多くの人びとが集う 57
◆地産地消の拡がりと、地域の豊かさ 58

第187話 秋田県由利本荘市(旧矢島町)  女性たちによる旧町唯一の直売所 60
――加工所、そして農村レストランをも視野に「やさい王国」
逆風突破の鍵:地域に「輝き」と「希望」を 60
◆女性たちの働きかけで町が直売所建設 61
◆旧町唯一の農産物直売所 63
◆加工所からレストランへと進化 64

第188話 北海道北見市(旧留辺蘂町)  温泉熱利用のハウス栽培を展開 66
――水銀精錬、リサイクル業から農業参入「野村農事」
逆風突破の鍵:地域資源に新たな「いのち」を 66
◆東洋一の水銀鉱山から出発 67
◆温泉熱のハウス栽培を展開 68
◆新たな六次産業化の取り組み 70

第189話 島根県出雲市  建設業から炭焼への新事業進出 72
――住宅の快適さを演出「出雲カーボン」
逆風突破の鍵:異業種参入で新境地 72
◆木質廃材利用で「炭」に注目 73
◆「調湿」「除湿」を深く意識する 75
◆「出雲屋炭八」のブランド化 76

第190話 鹿児島県鹿児島市  地域活性化、起業支援、地産地消を目指す 78
――年間五〇万人が集う「かごっまふるさと屋台村」
逆風突破の鍵:街に集いの場、「灯火」をともす 78
◆地域活性化を意識し、一等地に設置 80
◆鹿児島の「知」と「思い」を結集してスタート 81
◆食の種類、地域的などのバランスも考慮 83
◆かごっま屋台村の仕組み 84
◆年間三〇万人の目標を上回る五〇万人が訪れる 85
◆人びとの「思い」の交流 86



Ⅱ 水産加工業の新たな展開

はじめに 90

第191話 大分県佐伯市  地場の海藻をベースに事業化を深める 92
――「ひじき」に新たな命を吹き込む「山忠」
逆風突破の鍵:水産加工品の新たな可能性に向かう 92
◆国産ひじきにこだわりV字回復 93
◆ひじきを軸に常に進化を重ねる 94
◆ひじきをめぐる新たな課題 96

第192話 鹿児島県垂水市  世界基準で養殖魚の輸出に向かう 98
――養殖ブリの新たな可能性を追求「グローバル・オーシャン・ワークス」
逆風突破の鍵:世界に向かう水産加工業 98
◆ブリ養殖の輪郭 100
◆GOWの事業モデル 102
◆世界市場を視野に入れたSQF認証の取得を目指す 104
◆水産の世界に新たな可能性をもたらす 105

第193話 秋田県男鹿市  伝統のしょっつるを復活させる 107
――地域の食文化を守り、世界に注目される「諸井醸造所」
逆風突破の鍵:伝統が新たな価値を生み出す 107
◆醤油醸造の三代目がしょっつるの研究に踏み出す 109
◆一五年の研究を重ね、一九九七年に商品化 110
◆伝統のしょっつるに新たな可能性をみる 112

第194話 島根県松江市  伝統の「あご野焼き」を守る 114
――「本場」の「本物」にこだわる「青山商店」
逆風突破の鍵:親子で伝統を継承していく 114
◆あご野焼きの現状 115
◆島根県沖産の飛魚と炭火焼きにこだわる 117
◆親子による伝統の継承 119

第195話 島根県出雲市(旧斐川町)  半農半漁のシジミ漁師の展開 120
――宍道湖の豊かさを提供「大竹屋川魚店」
逆風突破の鍵:地域資源に新たな価値をつける 121
◆宍道湖のシジミ漁 122
◆全国的に珍しい寒ブナの刺身 124
◆宍道湖の幸に付加価値をつける 125

第196話 島根県松江市(旧鹿島町)  イワシとハタハタの丸干しに展開 127
――催事専門商社に販売「ヤマヲ水産」
逆風突破の鍵:地域のブランド品の次の課題 127
◆イワシとハタハタの丸干しが中心 128
◆催事専門商社依存の販売体制 130
◆ブランド品「恵曇の丸干し」の次の展開 131

第197話 兵庫県尼崎市  大阪伝統の昆布商の仕組み 133
――尼崎に移転し、地産地消へも関心「小倉屋居内」
逆風突破の鍵:伝統を基礎に新たな展開 133
◆昆布の「本場」大阪 132
◆独特の商習慣 136
◆昆布佃煮の老舗が新たな取り組みを開始 137

第198話 兵庫県神戸市長田区  水産加工品から出発し、農畜産加工品まで 140
――ファブレス企業として生産と市場をつなぐ「伍魚福」
逆風突破の鍵:全国の加工品に新たな「いのち」を 140
◆酒販店をターゲットに「つまみ」を売る 141
◆ファブレスで、畜産加工品、農産加工品まで拡げる 142
◆グルメファッション企業としての展開 144
◆「神戸で一番おもしろい会社」 145

第199話 宮崎県延岡市(旧北浦町)  後継者が戻り「カキ小屋」を展開 147
――漁村で本格的な漁師料理を提供「三洋水産」
逆風突破の鍵:Uターン人材が地域資源に着目 147
◆企業城下町から中山間地域、漁業地域も含む 148
◆Uターンし、家業のイセエビ販売に入る 150
◆イワガキの炭火焼を基本に提供 151
◆漁村で新たな価値の創造 153

第200話 島根県松江市(旧鹿島町)  閉鎖されるJAミニスーパーを引き受ける 154
――過疎の漁村で加工企業が幅広く展開「マルコウ、まるちゃんストア」
逆風突破の鍵:地域に雇用とサービスを提供 154
◆対面販売を経験し、加工に踏み出す 155
◆障害者雇用にも意欲的に取り組む 156
◆地区唯一の閉鎖店舗を再開させる 158
◆「美味しんぼ」で紹介され、ブレーク 159



Ⅲ モノづくり中小企業の今

はじめに 162

第201話 岡山県浅口市(旧鴨方町)  地場産業から独自領域に向かう 164
――ストローの里の老舗企業の転換「シバセ工業」
逆風突破の鍵:海外移管の中の地場産業企業 164
◆ストローの歴史と浅口(鴨方) 165
◆ストローの生産工程と特色 166
◆ストロー産業の現状 168
◆工業用パイプとしての利用可能性 169
◆新規事業への取り組み 170

第202話 島根県雲南市(旧掛合町)  山村に雇用の場を提供 172
――地域みんなで作り上げている工場「協栄金属工業」
逆風突破の鍵:山村に基盤技術を定着 172
◆地域の総力を上げた精密鈑金・プレス工場 173
◆中山間地域に「希望」を与えるV字回復 175
◆中山間地域のモノづくり企業の新たな旅立ち 176
◆山間地のモノづくり企業の行方 177

第203話 富山県小矢部市  中小企業を対象にペットボトルを供給 179
――プラスチック成形の世界で進化を重ねる「横山製作所」
逆風突破の鍵:広範囲の飲料メーカーの共通基盤 179
◆プラスチック成形業の変転 180
◆ペットボトルへの参入 181
◆中小飲料、食品調味料メーカーを支える 183

第204話 東京都八王子市  JR駅近接の地下工場を展開 185
――精密機械加工技術を究める「アミネックス」
逆風突破の鍵:大都市のモノづくり系企業のあり方 185
◆地下工場を設置し、超精密加工部門に向かう 186
◆「日本から入れざるをえない基幹部品」をやる 188
◆従業員が長く勤めてくれる会社 189

第205話 東京都立川市  都市型産業廃棄物処理工場の展開 191
――市街地の中で地域と共生「前田金属工業」
逆風突破の鍵:大都市のリサイクル事業のあり方 191
◆市街地化に飲み込まれる 192
◆都市型の廃金属処理工場を目指す 193
◆都市型廃金属処理業の意味 195

第206話 兵庫県神戸市  阪神大震災から復興した中小企業 198
――神戸ものづくり復興工場から工業団地に転出「高田工業所」
逆風突破の鍵:特殊領域を究め、存立基盤確保 198
◆仮設工場から復興支援工場、ものづくり復興工場へ 199
◆当初から二ユニットで入居 201
◆レーザー加工機を導入、子息も戻る 202
◆新たな環境に適応できる事業展開の課題 203

第207話 大分県佐伯市(旧宇目町)  都会のIT企業が中山間地域の廃校跡に進出 205
――地域貢献への関心が深い「イベントホライズン」
逆風突破の鍵:条件不利地域のIT企業の可能性 205
◆「会社は社会に貢献するもの」と考え、中山間地域に関心 206
◆廃校になっていた中学校に入る 207
◆ITに加え、「農」と「食」にも展開 209

第208話 中国大連市  中国進出中小企業の現在 211
――中国市場に深く食い込む「パンチ工業」
逆風突破の鍵:定着し、自主的に動く工場 211
◆金型部品で成功し、東証一部上場 212
◆中国国内販売を急速に拡大 213
◆「中国人に自主的に仕事をしてもらう」 215

第209話 中国大連市  残留夫人の子弟が大連で精密鈑金を 218
――後継者も駐在「天青機械製造」
逆風突破の鍵:ビジネスチャンスに敏感に対応 218
◆日本に帰国し、さらに大連に進出 219
◆精密鈑金から機械加工へ 220
◆後継者も異色の経歴 222

第210話 中国大連市  長興島の廃金属リサイクルプロジェクト 224
――日本の総合商社と中小企業が進出
逆風突破の鍵:市場オリエンテッドな本格進出 224
◆大連郊外の島の大開発 225
◆中国東北最大規模の廃金属リサイクル事業 227
◆廃金属リサイクル事業の流れ 230
◆中国国内事情への対応 231

結――新たな枠組みの中の「地域産業」のあり方 233
初出等一覧 238
地名索引 242
(各話冒頭「逆風突破の鍵」題字=筆者)


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