自分も他者も尊重しつつ、何ごとにつけ「ほどほど」をよしとする哲学の奥深さ。幸福度ランキング上位国に学ぶ国家像

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自分も他者も尊重しつつ、何ごとにつけ「ほどほど」をよしとする哲学の奥深さ。幸福度ランキング上位国に学ぶ国家像

関連ワード
ラーゴムが描く社会 スウェーデンの「ちょうどよい」国づくり
タイトル
サブタイトル
スウェーデンの「ちょうどよい」国づくり
著者・編者・訳者
鈴木賢志著
発行年月日
2025年 6月 30日
定価
2,420円
ISBN
ISBN978-4-7948-1294-0 C0036
判型
四六判並製
頁数
224ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-鈴木賢志(すずき・けんじ)
明治大学国際日本学部教授・学部長、一般社団法人スウェーデン社会研究所代表理事・所長。
1997年にスウェーデンに渡り、ストックホルム商科大学欧州日本研究所に約10年間勤務。
日本と北欧の社会システムの比較研究を専門とする。

内容

 スウェーデンには、人々に愛されてきた「ラーゴム」という考え方がある。自分を大切にしつつ、周りのことも考えて多くを求めすぎない、「ちょうどよい状態」を美徳とする一種の行動規範で、この国の人々のライフスタイルの基本となっている。この「ラーゴム」の精神が、個人だけでなく、スウェーデンという国の政治や経済、社会システムにも力強く息づいているのではないか——そう考え、本書を著すことにした。
 スウェーデンは国際的に見ても非常にユニークな国である。「高福祉高負担」という観点からはアメリカの対極に位置するが、経済的な豊かさではアメリカを上回っており、ご存じのように国民の「幸福度」は非常に高い。
 日本を含む多くの社会では、「高福祉高負担は勤労意欲を阻害し、働くだけ損だと考えて怠ける人が増える」という通念が根強い。しかしそうした通念をひっくりかえすようなことがこの国では日々起きている。その謎を解くカギが「ラーゴム」にあると断言したい。
 本書では、現在のスウェーデンを形づくっている社会システムや政治・経済・ビジネスの仕組み、先進的な環境政策などを「ラーゴム」の視点から読み解くことで、この国を総体的に理解することを目指した。スウェーデンや北欧に関心のある人が、各専門領域に踏み込む前に、まずはこの国の全体像をつかむためのテキストとしても活用できるものになっている。
 いま世界的に、社会の中に分断や対立をあえてつくり出し、それを煽ることで支持を拡げるという手法がアメリカを中心に蔓延している。スウェーデンが歩み続ける「ラーゴム」の道は、その有力なアンチテーゼとなるはずだ。むろん、そこには悩みも揺らぎもあるわけだが、それも含めて、日本社会の今後のあり方を考えるヒントともなるだろう。
(すずき・けんじ)

読者からのご感想

 北欧諸国は幸福度が高いことで知られるが、スウェーデンの場合この「ラーゴム」つまり「ちょうどよさの感覚」がその要因の一つなのかもしれないと腑に落ちた。自分としては、豊かで暮らしやすい生活を送れるかどうかは外的条件の他に心の持ちよう次第という面もあると考えてきた。本書のわかりやすい解説でそれが裏づけられた気がして、我が意を得たりと感じつつ、一方で手前味噌な考えに我ながら少し腹が立ったりもしたが、読後感はよかった。そのスウェーデンにおいても「ラ―ゴム感」の共有が薄れつつあるらしいのがやや気になった。(M.M.)

 2025年秋、日本で比較第一党+閣外協力政権が成立した。老後は誰もが年金で暮らせるという「普遍的」状況は過去のものとなってしまった。年金が少ないので働かざるを得ないのは悲しい。働く高齢者については所得税率を抑えてほしいし、企業は社会の公器であってほしい。「ちょうどよい」社会を考える上で本書を興味深く読んだ。「福祉国家はラーゴムでなければならない。給付は仕事へのインセンティブを減らすほど寛大にすべきではないし、税金は多くの中産階級が不満に思うほど高くすべきでもない」。ルンド大学のA・ベリ准教授の言う通りとは思う。(T.M.)

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