サプライサイド偏重の「構造改革」では、長期停滞からの脱出は望めない!需要の視点を織り込んだ画期的成長理論

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関連ワード
「重不況」の経済学
タイトル
サブタイトル
日本の新たな成長に向けて
著者・編者・訳者
向井文雄著
発行年月日
2010年 11月 24日
定価
3,300円
ISBN
ISBN978-4-7948-0847-9 
判型
四六判並製
頁数
384ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-向井文雄(むかい・ふみお)-
1951年生まれ。
東北大学卒。
(財)北陸経済研究所情報開発部長、富山国際大学非常勤講師、富山県職員研修所長等を経て、現在富山県民ボランティア総合支援センター専務理事。
論文「一面的な交付税論議の検証と行政のメカニズム」(2006年)など。

内 容

 この本の目的は、日本が輝きを失った90年代以来の長期停滞の本質的原因を検討することを通して、①日本の新たな成長の道筋を探り、②世界同時不況で再構築を迫られている経済学そのものの刷新に向けて新たな視点を提示する点にあります。経済学の用語は相応に頻出しますが、日本経済の行方に関心をお持ちの方に幅広く読んでいただけるよう、できるだけ平易な解説に努め、数式も登場しないように心がけました。
 表題の「重不況」とは、これまでに私たちが直面してきた「世界大恐慌」、日本の「長期停滞」、リーマンショック以後の「世界同時不況」のように、①バブル崩壊で発生し、②「流動性の罠」が生じ得るような大不況を指します。本書は、この「重不況」下では、需要制約や金融政策等に関して、通常の不況では表に出ない特異なメカニズムが顕在化すると考えます。日本の長期停滞に対してはこれまで、「新しい古典派」の理論に基づいて、需要を軽視し、生産性などに代表されるサプライサイドの問題を重視する「構造改革」が行われてきました。しかし、それが実施された小泉構造改革期(01〜06年)を中心に、世界に占める日本のGDP比率は、97年の14.1%から07年の8.0%へとほぼ半減しました。また、日本の人口一人当たり名目GDPのOECD加盟国中順位は、2000年の3位から07年の19位へと一直線に低下しました。改革の論拠となっていた主な仮説も、その後の検証によって実証されないことがいまや明らかになっています(1章)。
 一方で、世界同時不況は、需要の重要性を再認識させつつあります。本書では、通常はランダムで互いに相殺しあっている各経済主体の需要の将来見通しが、重不況下では一方向に「斉一化」し、そのために金利の影響は低下すると考えます(つまり重不況下では通説に反して金融政策の有効性が低下することになります)。また、経済成長や景気循環に「需要の制約」の観点を導入し、実効性ある成長戦略のための理論的枠組みを提示します。さらに、金融・資産経済が常に効率的であるわけではなく、かつ実体経済とは独立に運動し得るという観点から、景気循環、バブル、効率的市場仮説の破れ等を考えます(2〜4章)。
 以上を踏まえて、政府の財政出動と累積債務問題の解決策を検討します。また、高コストの先進工業国が取り組むべき成長戦略として、イノベーションだけでなく「非価格競争」「ニッチ」「北欧型政府経済システム」に着目します(5〜6章)。
 本書が試みる検討と提言を1人でも多くの方に吟味していただくことで、日本経済の未来に向けた建設的な議論が深まることを願っています(著者 向井 文雄)

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