華々しい明治の青春。知的障害者教育、婦人教育の先駆者としての仕事。遠い異国の友との交流を軸に、知られざるコスモポリタンの生涯を辿る。

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関連ワード
明治の国際人・石井筆子
タイトル
サブタイトル
デンマーク女性ヨハンネ・ミュンターとの交流
著者・編者・訳者
長島要一著
発行年月日
2014年 9月 24日
定価
2,640円
ISBN
ISBN978-4-7948-0980-3 
判型
四六判並製
頁数
252ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-長島要一(ながしま・よういち)-
1946年生まれ。
コペンハーゲン大学異文化・地域研究所DNP特任研究教授。
日本・デンマーク交流史のほか、森?外、アンデルセンの研究者・翻訳家としても知られる。
『森?外 文化の翻訳者』(岩波新書)のほか著訳書多数。

内 容

 本書の主人公・石井筆子は明治初期、将来を嘱望されてヨーロッパに女子留学生として派遣され、華々しい青春を送り、皇室に重用され、知的障害者教育・福祉の分野で先駆的な事業を成し遂げた。にもかかわらず、なぜか後代、「無名の人」となった。筆子はまた、日本における婦人教育の発展と女性の自立に貢献することを夢見ていたが、運命のいたずらからその夢は実現しなかった。むしろ自ら陽の当たらない場所で、縁の下の力持ちとして生きる道をあえて選んだ。苦難多き筆子の人生の支えとなったのはキリスト教であり、夫の石井亮一であったと思われる。しかし実は筆子には、遥か離れたデンマークの地にも得難い味方がいた。彼女の不幸な身の上を案じ続けてくれた年上の友ヨハンネ・ミュンターである。
 日清戦争直後に日本を訪れたヨハンネは、東京で筆子と出会って以来、彼女に生涯変わらぬ友情を注いだ。筆子のアルバムには、自分の青春の日々を記憶に留めていてくれるヨハンネの写真が大切に貼られていた。一方ヨハンネは、婦人教育の発展に奮闘する筆子の志に打たれ、デンマークに帰国後、主婦の立場を飛び越えて婦人参政権運動にかかわるようになった。筆子の情熱がヨハンネに影響を与え、筆子の成しえなかった仕事が遠い国で実践されることになったのである。
 本書では、2人の友情を裏付けるヨハンネの日本回想記『日本の思い出』(1905年)や、デンマークの当時の新聞記事などの新史料をもとに、知られざる「明治の国際人」筆子の輝ける日々をよみがえらせることを主眼とした。また、筆子が間接的にではあれ、婦人教育の国際的発展に影響を及ぼしたことをも明らかにできればと思う。本書によって、生前国際人として名を馳せた筆子の後世の「無名」が返上されることを祈っている。(著者 長島要一)

 目 次


筆子とは……i

プロローグ……3

第1章 鹿鳴館――和装の通訳婦人……7


第2章 渡辺筆子の娘時代……21


第3章 小鹿島果おがしまはたすとの結婚と女子教育……27


第4章 ヨハンネ・ミュンターの日本滞在……35

 『日本の思い出』 36
 日本との出会い 39

第5章 ヨハンネの回想記『日本の思い出』から……51

 『日本の思い出』の背景 52
 日本の第一印象 54
 高台の家 62
 息子の学校 76
 日光へ 77
 青山光子のエピソード 87
 九代目団十郎の『暫』 93
 行楽の秋と観菊会 96
 サイゴンに連れていかれた女中ハナ 103

第6章 回想記『日本の思い出』に描かれている筆子……109

 東京での交遊 110
 華族女学校を訪問 125
 筆子が催した茶会 133
 北白川宮の葬儀 140
 日本との別れ 150

第7章 筆子の打ち明け話――親密の時……165

 親密の時 166

第8章 その後の筆子……183

 滝乃川学園 184
 石井亮一との再婚 186

第9章 帰国後のヨハンネ……189

 ラフカディオ・ハーンの紹介 190
 ヨハンネの著作『朝焼けの国から』 193
 ヨハンネの著作『菊』 197
 ヨハンネの著作『影の世界から』 199
 『朝焼けの国から』の書評 202

第10章 ヨハンネの手紙と筆子の返事……205

 婦人参政権運動をめぐって 206
 筆子の手紙とヨハンネの返信 207
 ヨハンネの二通目の手紙 213
 チャップマン・キャット夫人の日本訪問と筆子の対応 217
 ヨハンネの三通目の手紙 221

あとがき――筆子とヨハンネの変わらぬ友情……224
参考文献一覧……229
筆子・ヨハンネ関連年表……234

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