「自由主義の勝利」論への根源的批判のために

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関連ワード
自由主義の再検討
タイトル
著者・編者・訳者
松園 伸・山岡龍一編
発行年月日
2005年 5月 25日
定価
6,270円
ISBN
ISBN4-7948-0660-4 
判型
A5判上製
頁数
398ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-藤原保信(ふじはら・やすのぶ)
1935年生まれ、94年没。元早稲田大学政治経済学部教授。政治学博士。政治思想史専攻。
『自由主義の再検討』(岩波新書、1993)など著書多数。

内 容


 〈藤原保信著作集〉第9巻は、遺作『自由主義の再検討』、没後に刊行された『自由主義の政治理論』、および『再検討』の続編として構想され、未完に終わった遺稿「競争の論理から共生の論理へ」を収録する。
 本巻に収める諸論文は、それまでT・H・グリーン、ホッブズ、ヘーゲル、大山郁夫などの思想家を、現実との緊張関係を常に保ちながらも、まずテキストの徹底的な理解によって探究し、多くの著作を生んできた藤原が、それまでの思想史研究の基礎に立って、現代の危機を克服するための理論を構築する段階に移っていく画期的な時期にあたる。「政治理論と実践哲学の復権」(1981年)、「政治哲学のパラダイム転換のために—自然の再生・人間の再生・政治の再生」(1983年)の2論文はその劈頭を飾るものといえるであろう。『自由主義の再検討』(1993年)は、その中でもかれの生前最後の作品である。藤原は自由主義に先行する古典古代以来の思想史を概観したのち、市場経済原理の始祖としてのアダム・スミスと議会制民主主義理論の基礎を築いたジョン・ロックを軸とする自由主義理論をラディカルに批判していく。次いで自由主義の矛盾を解決すべく生まれながら、ついに「失敗」と終わった社会主義体制の問題点を探っていくのである。そしてソ連邦をはじめとする社会主義体制の崩壊後急速に台頭してきた自由主義の「勝利」論に対し根本的な疑問を提起する。そして最後に藤原は新しい共生の途としてコミュニタリアニズム(共同体主義)を提示していくのである。自由と平等の新しいあり方を模索する者、地球規模での核戦争・貧困・環境破壊の危機に対して政治がなすべき役割を真摯に考える人々などには格好の道標となるであろう。巻の後半は『自由主義の再検討』の叙述においても基礎となったジョン・ロック、アダム・スミスの自由主義観を、『人間知性論』(ロック)、『道徳感情論』(スミス)などのテキストの読み込みを通して明らかにしようとした研究である。自由主義とりわけイギリスのリベラリズムの研究者にとっては欠かせないものとなっている。



関連書籍:
『藤原保信著作集 第10巻 公共性の再構築に向けて』

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