自由で環境保全的なエネルギー分散型社会を実現してきた北欧社会の姿が浮かび上がる

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タイトル
北欧のエネルギーデモクラシー
著者・編者・訳者
飯田哲也著
発行年月日
2000年 3月 15日
定価
2,592円
ISBN
ISBN4-7948-0477-6 
判型
四六判上製
頁数
280ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-飯田哲也(いいだ・てつなり)/環境エネルギー政策研究者。1959年、山口県生まれ。京都大学工学部修了(原子核工学)、東京大学先端研博士課程単位取得満期退学。1996年〜現在、スウェーデン・ルンド大学客員研究員。1992年〜現在、日本総合研究所主任研究員。2000年4月から(株)自然エネルギー・コム代表取締役社長および京都女子大学現代社会学部教員。編著書、『光と風と森が拓く未来』かもがわ出版、1999年。共著書、『環境知性の時代』(「内橋克人 同時代への発言」五巻、対談)岩波書店、1999年。

内 容

目  次



はじめに



◆「風力電車」が走る!

───グリーン電力の登場とスウェーデン電力市場改革

風力電車が走る風景
電力市場改革前
スウェーデンの電力市場の歴史
新しい電力市場の登場
激変する国内電力市場
電力市場統合へと向かう北欧
緑の電力市場の出現
電力市場改革の行方

◆「化石燃料ゼロ」を宣言した町

───スウェーデンのローカルアジェンダ21

北欧のローカルアジェンダ
全二八八コミューンが取り組む地域主導のローカルアジェンダ21
政府と環境NGOによる支援
ベクショーのローカルアジェンダ21
「化石燃料ゼロ」宣言
未来に挑戦するコミュニティ
大学町ルンドのローカルアジェンダ21
ストックホルムの都市再生への挑戦
地域が創造する持続可能な未来

◆脱原発に挑戦するスウェーデン

原発閉鎖合意
スウェーデンの原子力事情
スウェーデンの原子力政策の歴史
原子力開発期(〜1970年初頭)
反原発首相の誕生と原発国民投票前夜(1972年〜1979年)
原発国民投票からチェルノブイリ原発事故へ(1980年〜1986年)
チェルノブイリ原発事故の余波(1987年〜1991年)
グローバリゼーションの時代へ(1992年〜現在)
脱原発への社会の応答
1999年11月30日

◆スウェーデンのエネルギー未来像

1997年エネルギー政策
「非化石化」の進むエネルギーシステム
エネルギートリレンマ───経済成長とエネルギー成長の分離へ
ダム開発の終焉
倍増したバイオマスエネルギー
環境税
エネルギー政策決定の流れ
脱原発から持続可能な未来へ

◆原発を拒否したデンマークのデモクラシー

デンマークの戦後
新しい環境保護運動(NOAH)
対抗文化の二極
原子力論争の幕開け
原発モラトリアムの決定
原発のないエネルギーシナリオ
原子力政策の放棄へ
多様な運動の登場
ODAの今、そして…

◆デンマークのエネルギー未来像

バラトンホテル
デンマークの「環境知性」
第二の代替エネルギーシナリオ「AE83」
「エネルギー2000」の衝撃
エネルギー2000からエネルギー21へ
省エネルギーとエネルギー税制
未来へ、デンマークの挑戦
より少ない消費の「豊かさ」へ

◆風車を共有する人々

ハヴェン風力協同組合
風力共同組合の歴史
風力発電ルールの形成へ
風力発電の電力会社
風力発電と送電系統との接続
コペンハーゲンに風車がやってくる

◆自然エネルギー自給を目指す島々

───アイルネットと欧州の再生可能エネルギー戦略
サムソ島への道のり
デンマーク・サムソ島の挑戦 「自然エネルギーアイランド」構想の背景
サムソ島・エネルギー環境事務所
スウェーデンの辺境からバルト海の中心へ
ゴットランドに吹く未来への風
自然エネルギー100パーセントの夢を担う人々
欧州自然エネルギーアイランド「アイルネット」
アイルネットを支援するEUのエネルギー政策
欧州委員会のエネルギープログラム
地域ネットワークとエネルギー政策

◆不安の時代を超えて

───「エコロジカルな民主化」に向けて
1999年9月30日……
「不安」が要請する新たなデモクラシー
原発紛争からコンセンサス会議へ
「エコロジカルな民主化」に向けて
原子力ムラを超えて

◆あとがき


◆参考文献一覧


◆索引




書  評


「東京新聞」(4月9日)
評者・長谷川公一(東北大学大学院教授・環境社会学)  

 茨城県東海村のJOC臨海事故を契機に、政府や電力会社の原子力推進政策への不安や疑問が急速に高まっている。
 ではどうすべきか、という問いに、本書は大きな示唆を与えてくれる。スウェ−デンやデンマ−クは成熟した福祉社会として知られているが、エネルギ−の効率利用と自然エネルギ−の開発に熱心で、地球温暖化対策をリ−ドする、EU諸国の牽引車でもある。
 これまでも昨年11月に1基目の原発閉鎖に踏み切ったバイオマス大国スウェ−デンや原発のない風力発電大国デンマ−クの断面は伝えられてきたが、両国でなぜそのような政策が可能になったのか、社会的合意をつくりあげるに至るプロセスを、社会のあり方、政治とりわけ地方自治との関連で詳細に論じたものは本書以前にはなかった。エネルギ−消費をおさえ、原子力も化石燃料への依存も減らそうという「電力のグリ−ン化」に向かっての活力と創造性にみちた多様な実験が、コミュニティレベルからどのようなイニシアティブのもとで展開されひろがりつつあるのかを、具体的に述べている。

 むろん本書が描き出す構図はけっして単純ではない。進行中の電力市場の改革は、グロ−バルな多国籍企業へと強大化をめざす電気事業と、コミュニティ−・ベ−スのエネルギ−事業、電気事業との対立・緊張を内包している。
 本書を通して鮮やかに浮かびあがってくるのは、自然エネルギ−と分権的な民主主義との親和性であり、「持続可能性」という理念のもとに未来を選びとろう、エネルギ−消費のあり方と供給システムの変革をとおしての社会改革をはかろうという両国社会の強い意思である。それと対照的な中央集権的で官僚主義的な、惰性と既得権益に引きずられた日本の政策決定過程の硬直性と無策ぶりである。とくに地方自治体の職員や電力会社などエネルギ−産業の中堅職員、市民活動の関係者に是非読んでほしい。日本はエネルギ−資源に乏しい、風力発電などの自然エネルギ−は頼りない、原発は温暖化対策にもなるという宣伝を反復することがいかに知的な怠惰であるかを痛感せずにいられない。

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