古今の賢者とのダイアローグで未決の哲学的命題に迫る

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タイトル
私の哲学的遺言
サブタイトル
衝突する文化、共生する文化
著者・編者・訳者
ジャン・ギトン著
 
二川佳巳訳
発行年月日
1999年 4月 30日
定価
3,024円
ISBN
ISBN4-7948-0446-6 
判型
四六判上製
頁数
340ページ

著者・編者・訳者紹介

訳者-二川佳巳(ふたがわ・よしみ)フランス文学。

内 容

 1999年3月に97歳でこの世を去った最後のフランス人カトリック哲学者の注目の遺書。古今の賢者とのダイアローグの形式で「悪の問題」、「自由」など未決の哲学的命題に迫る。
 「政治的遺言」を連想させるそのタイトルを素直に解すれば、この本は、最後のフランス人カトリック哲学者を自認する、まもなく98歳にならんとするギトンが、哲学者として自己の信念を明かした遺作ということになろう。事実、この本のなかでは、いくつかの重要な哲学的問題に対する彼の見解が、これまで以上に明快に提示されている。ただし、老獪なギトンのことである、やはり、一筋縄ではいかないようだ。
 「私が死んだ夜…」という冒頭の一句から明らかなように、この作品は一人称形式のフィクションなのである。主人公の「私」はギトンその人であり、現に実在する人物たちが登場するため、作品にはリアリティが保たれているが、時代設定は21世紀初頭であるらしい。全体は、「私の死」、「私の埋葬」、「私の裁き」という3部より成り、「私」の臨終から、天上の裁きにいたるまでが扱われている。つまり、「私、ギトン」は果たして天国に行けるのかどうかが、この物語のメインテーマなのだ。そしてそのサスペンスを維持しているのが、パスカル、ベルグソン、パウロ6世、エル・グレコ、サンゴール、ド・ゴール、ソクラテス、ブロンデル、ダンテ、ミッテランなど錚々たる人々を相手に「私」が交わす対話である。哲学的問答を思わせるやりとりを通じて、「私」が信仰を持つ理由が明かされる。さらにまた「悪の問題」、「魂の不滅」、「自由」、「道徳」などの哲学的問題が論じられる。
 その哲学的見解を、物語という形式のもとに提示するという戦略は、少なくとも読み物としては、成功しているようである。フィクションのヴェールがかけられたせいで、皮肉屋ギトンの本領が発揮され、あちこちに笑いが導入されたからである。とりわけ、いずれ出版されるはずの、この『哲学的遺言』の売れ行きを心配する小心で策略家の「ギトン」を登場させるためには、つまり虚構の(?)自分を笑い飛ばすためには、どうしても物語という形式が必要だったのである。
 ただ、困ったことが、一つある。読者は、読み終わった後で、こう自問してしまうのだ、「一体、どこまでが本当のギトンなんだろう?」と。

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