激動の時代の政治学と政治学者の使命。15名の思想家の知的営為を現代の課題に照らして検討し、政治学者の使命を浮彫にする。

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関連ワード
二〇世紀の政治理論
タイトル
著者・編者・訳者
押村高・谷喬夫編
発行年月日
2006年 5月 10日
定価
6,600円
ISBN
ISBN4-7948-0689-2 
判型
A5判上製
頁数
472ページ

著者・編者・訳者紹介

藤原保信(ふじはら・やすのぶ)
1935年生まれ、94年没。元早稲田大学政治経済学部教授。政治学博士。政治思想史専攻。
『自由主義の再検討』(岩波新書、1993)など著書多数。

編者-押村高(おしむら・たかし)/青山学院大学国際政治経済学部教授。博士(政治学)。
谷喬夫(たに・たかお)/新潟大学大学院現代社会文化研究科教授。政治思想史専攻。

内 容



 本巻の目的は、バーカー、ウェーバー、シュミット、イーストン、ロールズ、アレント、ハーバーマスなど、20世紀を代表する思想家たちの政治理論の紹介と検討である。しかし、その内容は理論の概説を越えた深みを持っている。とくに公共性の喪失、人間疎外、環境破壊といった時代の問題と真摯にとり組み、解決の方向性を示そうとした政治理論を中心に取り上げることによって、政治学者藤原保信は、政治理論の今日的な課題と政治学の歩むべき道をも呈示しようとした。
 藤原によれば、政治理論の存在意義は規範の探求であり、単なる対象としての政治世界の把握や解釈ではない。したがって、科学主義や客観主義のように記述や理解を自己目的とするものは、どれほど精緻な定式やモデルを呈示できたとしても真の政治理論とは呼べないことになる。さらに、政治事象の側にのみ論理を求め、認識主体のあり方についての自己吟味を行わない理論もまた、真の政治理論の名に値しない。本書を読めば、政治学者の使命とは何かが、おのずと明らかになってゆくのである。
 藤原は本書で、20世紀の課題を「自然との調和的関係を回復すること」、「平和的で公正な国際社会秩序を作り出すこと」、「差別と抑圧の構造をなくし生の意味を回復すること」と定式化し、各理論を検討した後に、それぞれの課題とのかかわりで思想家たちの貢献と限界をも論じている。その意味で本書は、二一世紀の現代的課題解決への理論的な手掛かりを得ようとする者にとっても裨益するところが多いであろう。もちろん、アレント、ハーバーマスなど、個別の思想家についての概観を得たいという人々にも有益であるが、それだけでなく、本書によって藤原の切り口に興味を覚え、藤原と問題圏をいくらかでも共有した読者が、本書の問題圏を発展させた『政治哲学の復権』(第7巻)や『政治理論のパラダイム転換』(第8巻)へと進むように願って止まない。

〈目次〉
刊行の辞
序 二〇世紀と政治理論

第 I 部 多元的国家論
第一章 E・バーガー−理想主義の継承
第二章 H・J・ラスキ−多元的国家論から階級国家論へ
第三章 G・D・H・コール−ギルド・ソーシアリズム

第 II 部 科学とイデオロギー
第四章 M・ウェーバー−合理化のエートスと行方
第五章 C・シュミット−自由主義批判の論理
第六章 K・マンハイム−イデオロギーとユートピア

第III部 政治学の経験科学化
第七章 H・D・ラスウェル−精神分析学的手法
第八章 D・イーストマン−一般体系分析
第九章 K・W・ドイッチュ−サイバネティクスの政治理論

第IV部 政治哲学の再生
第一〇章 J・ロールズ−正義の理論
第一一章 R・ドゥオーキン−平等の価値
第一二章 R・ノズィック−最小国家の擁護

第V部 モダンとポスト・モダン
第一三章 H・アレント−政治的空間の回復
第一四章 J・ハーバーマス−コミュニケーション的行為の理論
第一五章 M・フーコー−規律=訓練権力と抵抗

結論 総括と展望

あとがき
解説(押村高・谷喬夫)
人名索引・事項索引

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