地中海周辺地域に光を当て封印された中世哲学史を初めて繙く

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タイトル
中世哲学史
著者・編者・訳者
アラン・ド・リベラ著
 
阿部一智・永野 潤・永野拓哉訳
発行年月日
1999年 9月 30日
定価
8,640円
ISBN
ISBN4-7948-0441-5 
判型
A5判上製
頁数
650ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-アラン・ド・リベラ(Alain de Libera)
フランスの哲学者・中世史家。1948年生まれ。現在、パリ大学高等研究院指導教授、ジュネーヴ大学教授。主に中世キリスト教神学史を講ずる。エックハルト研究が有名。邦訳『中世知識人の肖像』(新評論)他。

内 容

 我々は、普通、西洋哲学史をキリスト教西欧の視点から見ている。そこに登場するビッグネームは「古代」のプラトンやアリストテレスであり、「近代」のデカルトやカントであって、「中世哲学」は、まるで言葉そのものの中に矛盾があるかのように、薄闇の中に沈められてきた。中世は二つの光明に挟まれた長いスランプ期間である。しかし、それはキリスト教西欧から見た哲学史にすぎない。
 ユダヤ人やイスラム教徒の哲学史の中では、中世は文句なく光明の季節である。それはマイモニデスがユダヤ哲学をその最高水準にまで押し上げ、アヴェロエス介してしばしの間イスラム哲学が西欧を席巻した季節である。
 これらと並んで輝きを放っているのが、西欧以外のキリスト教世界つまりピザンツ帝国の哲学であろう。しかし、ポティオスやプレトンについて我々は何を知らされているだろう。
 本書は、無視され、排除され、周辺化されてきた西洋哲学史に不可欠の部品を、それがあった場所に組み込もうとする中世哲学史である。全体の半分をラテン哲学以外の哲学(ユダヤ・イスラム・ピザンツ哲学)に割いた中世哲学史はかつて書かれたことがない。
 こうした哲学史を構築するために、著者は「研究拠点の移動」という観念を発明する。水が大地のわずかな傾斜を見つけて己の進路を決めるように、哲学研究も己に最も適した環境を求めてつねに移動する。文献・翻訳の豊富さ、権力の庇護もしくは不介入、教会の寛容−そうした条件が哲学の水路を決める。
 ユスティニアヌス帝がアテナイのアカデメイアを閉鎖して古代哲学を終焉させた時、哲学者の亡命先はペルシア領のハラーンであった。中世哲学はその後ユダヤ人・イスラム教徒にリレーされて中近東・北アフリカを運ばれイベリア半島に上陸する。南欧から西欧へ、という我々が知っている西洋哲学の移動経路は確かに始点と終点に関しては間違っていない。しかし両者は地中海の周囲を時計回りに辿る迂路で結ばれているのである。それが忘れられた。この忘却には深い意味がある。そして、それを現代において想起することにも。
  読者は本書を読んだ後でかならずや物事を少し違った風に考えるようになるに違いない。
 (あべ・かずとし フランス哲学)

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