多数の貴重な図版で辿る科学=芸術的想像力の歴史。

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タイトル
太古の光景
サブタイトル
先史世界の初期絵画表現
著者・編者・訳者
マーティン・J・S・ラドウィック著
 
菅谷暁訳
発行年月日
2009年 7月 7日
定価
4,860円
ISBN
ISBN978-4-7948-0805-9 
判型
AB判(ワイド判)変型(215mm×235mm)
頁数
296ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-Martin J.S.Rudwick(マーティン・J・S・ラドウィック[1932-])-
ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジで地質学・古生物学を学ぶ。
腕足類の研究から出発したが、次第に科学の歴史・哲学に関心を移す。
現在はカリフォルニア大学名誉教授、ケンブリッジ大学科学史・科学哲学科所属研究員。

内 容

 皆さんは自然史博物館やテレビ番組で「太古の光景」(たいていは恐竜たちが闊歩している)をご覧になったことがあるでしょう。本書はその「太古の光景」の19世紀における誕生と初期の発展の過程を叙述したもので、「光景」の変遷を示す105枚の図版と、「光景」制作者による86篇の解説の文章と、著者ラドウィックによる時代背景の説明からなっています。
 ですが本書にはティラノサウルスは登場しません。当時知られていた数少ない恐竜の一つイグアノドンも、サイのように四足で這う鈍重な姿で描かれています。現在描かれる「太古の光景」の方が正確で豊かなものになっているのは、むろんその後の研究が進んだためです。しかし「太古の光景」の黎明期においては、化石が発見されその研究が進んだから、太古の光景が自動的に誕生し発展したと考えることはできません。
 太古の光景を最初に思い描くにあたって問題だったのは、人間が存在しない時代の光景をどうして「人間の視点」によって描けるかということでした。これを解決したのは思いがけなく、西欧に古くから存在した聖書の挿絵でした。
 科学者を悩ませたもう一つの問題は、「太古の光景」には多かれ少なかれ想像によらなければならない部分が含まれるということです。ここでは指導的な科学者より、傍系の(あるいは周縁にいた)科学者の方が斬新で大胆な行動をするという面白い現象が見られます。最初期に描かれた太古の光景は単一の未分化の光景でした。人類以前の時代は「太古」として一つにくくられ、時代の異なる生物が一緒くたに単一の光景の中に登場していました。「太古」の各時期を追う連続的光景が創作されたとき、地球にも長大な「歴史」のあることが広く大衆に知られるようになったのです。
 連続的光景の最後に登場するのは「人間」です。「人間の誕生」を描くとき、「太古の光景」には制作者のさまざまな思いが投影されるという事態が最もあらわになります。ある制作者は、初版では聖書の教義にのっとり「エデンの園のアダム」的な光景を描いていましたが、4年後の第6版では、当時の先史学の成果を踏まえ、石斧をもち獣皮をまとう原始人の光景に劇的に変更しなければならなかったのです。
 書きたいことは尽きません。これから先はぜひ皆さんが本書を手にとって、図版とともに、現代の科学史家の中では最もすぐれている(と訳者の思う)ラドウィック氏の、「簡潔にして緻密な」(この実にぴったりの言葉は担当編集者が使ったものですが)記述をお楽しみください。(訳者 菅谷 暁)

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