《シリーズ近江文庫》第8弾
放浪の陶工として、また力士としても名を馳せた男の生涯を、同じく陶工である筆者が大胆に描く人物伝!

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紋左衛門行状記
タイトル
サブタイトル
酒と相撲とやきもの作りの放浪人生
著者・編者・訳者
冨増純一著
発行年月日
2011年 11月 14日
定価
2,200円
ISBN
ISBN978-4-7948-0886-8 
判型
四六判並製
頁数
236頁+カラー口絵8ページ

著者・編者・訳者紹介

著者-冨増純一(とみます・じゅんいち)-
1938年、信楽町長野生まれ。
1992年、伝統工芸士に認定される。
元信楽町議会議員、元甲賀市観光協会会長。
2010年秋、瑞宝単光章を受賞。陶号は「壺久郎」。
著書に『信楽焼の鑑賞(Ⅰ・Ⅱ)』などがある。

内 容

 江戸末期(1821年)に信楽に生まれ、のちに信州・越後・甲州とやきものを作りながら放浪を繰り返し、最期の地となった甲州において人生の幕を閉じた(1902年)陶工がいた。その名を「奥田信斎」という。美男子であるうえに体格がよく、大酒呑みという豪快な男であった。この男、実は力士としても名を馳せ、四股名を「立浪紋左衛門」といった。同じく信楽で陶工をしている筆者は、ある時、この男に興味をもつようになり、その足跡を調べはじめた。そして、数年後、信州の赤羽と塩尻近くに位置する洗馬に「信斎作」のやきものがあることを知り、この男の一生を調べ尽くそうとさらなる調査に乗り出した。しかし、作品以外に残っている資料はごく僅かなもので、苛立ちの日々が続いた。そこで筆者が思いついた手法は、自らが紋左衛門となってこの男の人生を描き切るということであった。
 本書は、フィクションを中心として奥田信斎の一生を表したものである。フィクションとはいえ、同じ陶工である筆者のやきものに関する記述は正確でリアリティ豊かなものとなっている。それがゆえに、陶器をこよなく愛する多くの日本人にとっては、やきものの「入門書」にもなり得る。日本六古窯の一つである信楽において、やきものがいかにして作られてきたのか、また陶工達の日常生活はいかなるものであったのか、そして信楽が全国の産地にどのような影響をもたらしたのかなど、様々な視点から楽しむことができる。完成品を使ったり飾ったりして楽しむだけでなく、その制作過程や歴史を知ることでやきものの「すごさ」がより明らかになり、購入者の素養も高まることになる。筆者は「あとがき」において、「何事も、可能なかぎり書き残して、後世に伝えていかなければならないということを、本書を著すことで痛感した」と述べている。読後、「伝承」という言葉の重みを再確認した。
(文責・本書編集担当)

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