100年余の歴史を持ちつつも異端とされてきた「もう一つの経済学」の多様な学的蓄積

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[増補改訂新版] エコロジー経済学
タイトル
著者・編者・訳者
ホワン・マルチネス=アリエ著
 
工藤秀明訳
発行年月日
1999年 7月 20日
定価
4,620円
ISBN
ISBN4-7948-0440-7 
判型
四六判上製
頁数
480ページ

著者・編者・訳者紹介

訳者:工藤秀明(くどう・ひであき)/千葉大学法経学部教授。

内 容

 現代産業文明の根幹をなすのは大量生産と大量消費の相互促進体制であるが、その形成と発展に最も寄与した社会学は、「経済の成長」「生産力の発展」を中心理念として追求し続けてきた経済学であろう。したがって1960年代以降、環境破壊や資源枯渇が社会問題としてクローズアップされてきたとき、上のような文明や体制に対する批判が同時に経済学に対しても向けられたのは当然であったかもしれない。
 もちろん経済学も、従来の原理を適用し枠組みを拡張して問題への対処を盛んに試みてきた。しかし地球温暖化・オゾン層破壊・熱帯林消失・生物種絶滅・砂漠化等々、問題はいまや地球規模化して生命を根源から脅かし始めており、自然科学者たちの警告によれば、このままでは21世紀前半に全搬的破局が到来するのは不可避となっている。
 そうしたなかで、従来の経済学の<市場中心の社会経済→外部の第二義的世界としての環境>という思考ベクトルを、<永続可能性の基礎としてのエコロジー→それに内在すべき社会経済>へと転換し、原理と枠組を新たに構成し直そうとする試みが注目されている。この「もう一つの経済学」の試みは、内実に即して「エコロジー経済学」と呼ばれ急速に共鳴基盤を広げて、1988年には、エコロジー的にも経済的にも永続可能な世界の実現をめざして「国際エコロジー経済学会」が結成されるに至った。
 本書は、ハーマン・デイリーらとともにこの学会を創設した人物の代表作で、つい最近誕生したばかりのように思われがちなこの「エコロジー経済学」が、実はすでに100年余の歴史を有し、多様な学的蓄積を行ってきたことを明らかにしている。主流的経済学と同時期に誕生しながらその陰に隠され、異端として歴史の中に埋没させられてきた実績の数々を発掘・復権し、問題群史として見事に整序しているのである。新しい経済学体系の構築にとって多くの示唆や手がかりを与えてくれると同時に、近代経済学、マルクス経済学の従来忘れがちだった側面も新たな光を当て、危機を指摘されて久しい両経済学の再生契機をも示してくれているように思われる。

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